株式会社東芝・東芝プラントシステム株式会社・鹿島建設株式会社｜インタビュー｜1 FOR ALL JAPAN

インタビュー一覧

2017年2月15日

代田しろた一郎いちろうさん: 鹿島建設株式会社
放射線ほうしゃせん管理担当

長谷川はせがわ義秀よしひでさん: 鹿島建設株式会社
機電グループ長

肥田ひだ泰明たいめいさん: 鹿島建設株式会社
第4工事グループ工事長

菊池きくち淳あつしさん: 鹿島建設株式会社
第4工事グループ計画長

野地のじ明彦あきひこさん: 鹿島建設株式会社
第4工事グループ工事長代理

高橋たかはし純じゅんさん: 株式会社東芝
原子力事業部原子力フィールド技術部第一担当

山田やまだ芳弘よしひろさん: 東芝プラントシステム株式会社
原子力事業部原子力建設部福島安定化グループ

　3号機では、使用済燃料プールに残された燃料の取り出しに向けて作業が進んでいます。これまでの除染じょせんと遮しゃへい作業によって、原子炉げんしろ建屋の最上階の放射線ほうしゃせん量を低くすることができました。今後は、原子炉げんしろ建屋に屋根カバーをかけて、いよいよ燃料取り出し作業に向かっていきます。今回は、そうした重要な工事を行ってきた3号機原子炉げんしろ建屋カバーリング工事に携たずさわったみなさんにお話をうかがいました。

計画を立てる人と現場の人が心を一つにして共同作業をする

いよいよ3号機の原子炉げんしろ建屋にカバーをかけるところまで来ましたね。

肥田さん：

　工事は2011年夏からスタートしました。崩くずれたガレキを取り除のぞく作業が終わったのが2013年7月です。しかし、燃料取り出しのためのカバーをかけるには、人が現場に立ち会わなくてはならないため、放射線ほうしゃせん量を低くする必要があります。そこで、2013年8月から2016年6月まで、最上階の除染じょせんをしてきました。次に、除染じょせんだけでは線量が落ち切らないため、遮しゃへい体と呼よばれる厚い鉄や鉛なまりの板を床ゆかにしきつめる工事を2016年12月まで行いました。

みなさんは、どういう分担で仕事をされたのですか。

野地さん：

　除染じょせん、遮しゃへいについては、実際の作業を私たち鹿島建設が担当しました。そのうち、肥田と菊池と私がいる第4グループが現場での作業を行いました。関係者は作業員や事務所の人たちを含ふくめると全部で100人ほどですが、そのうち第4グループ関係が半分の50人ほどになります。

長谷川さん：

　私は、主に遠隔操作えんかくそうさ機械の保守を担当しました。すでにある技術をもとに建設機械とIT機器を組み合わせたものですが、誰だれも経験のしたことがない場所で動かすものですから、思いもかけない問題が出てくることがあります。そんなときは作業員の声を聞き、社内外の知恵ちえを結集して一つずつ解決していきました。

代田さん：

　私は現場での放射線ほうしゃせん管理が仕事です。初めて1Fで仕事をする作業員のみなさんは、放射線ほうしゃせんについてあまり知識のない人が大半です。線量が高い場所での作業なので、放射線ほうしゃせんについての知識を深めるとともに、作業員の被ひばく線量をなるべく少なくする努力をしてきました。例えば、前日から作業の場所や内容を細かくチェックして作業員に指導をしたり、当日の朝にプレKY（危険きけん予知訓練）をしたりしています。

高橋さん：

　ガレキ撤去てっきょは、鹿島建設さんと分担して進めてきました。除染じょせん、遮しゃへいについては、鹿島建設さんが行った工事を受けて、私たち東芝が放射線ほうしゃせん量の測定をしています。今後は、燃料を取り出すための装置そうちを開発して、その運転を支援しえんすることが大きな仕事になります。

誰だれにとっても初めての現場なので試行錯誤さくごしながら手探てさぐりで進めてきた

どのようなことが難むずかしかったのでしょうか。

菊池さん：

　最初は、どうすれば線量が下がるのか、手探てさぐりの状態でした。大きなガレキを取り除のぞけば線量が下がるわけではないのです。かと思うと、小さなガレキを取り除のぞいたら一気に下がったこともあったのです。どこから強い放射線ほうしゃせんが出ているのか、その「線源せんげん」を特定するのに時間がかかりました。

長谷川さん：

　機器の整備をすべて自分たちでしなければなりません。というのも、高線量の場所で使用して放射線ほうしゃせんを浴びた機器は、メーカーの工場に戻もどすことができないからです。とはいえ、機械がうまく動かないと作業全体が止まってしまいます。ですから、新しい機器を使うときは責任を感じて緊張きんちょうしました。

仕事で工夫したことはありますか。

山田さん：

こうした現場は初めてですから、試行錯誤さくごの繰くり返しでした。例えば、線量計の計器そのものはこれまでと同じものを使うのですが、現場は高線量ですから人が持っていって測るわけにはいきません。そこで、クレーンで線量計を吊つり下げて、遠隔操作えんかくそうさで測る方法を考えて、それに合うシステムを作るということもありました。

この仕事は成果が目に見えるので難むずかしいけれどもやりがいがある

どんなときにやりがいを感じましたか。

山田さん：

　2015年8月2日に、燃料プールの中から20トンという大きなガレキを取り出すという作業がありました。やり直しがきかない作業ですから、さすがに緊張きんちょうしました。計画とは違ちがった状況じょうきょうも出てきましたが、なんとか問題なく終了しゅうりょう。このときは、「これで次の段階だんかいに進める」と感じて、ほっとしたのと同時に大きな満足感を覚えましたね。その日はみんなで飲みに行きました。

菊池さん：

　床ゆかに遮しゃへい体を置く作業も苦労しました。遮しゃへい体に使う鉄骨てっこつは、大きなもので重さ20トン、長さ20メートルを超こえます。普通ふつうの建築現場では使わない巨大きょだいなものをクレーンで吊つり上げて敷しいていくのです。もちろん、どこに置くかという計画は立ててあるのですが、現場はその通りとは限りません。ないはずのものがあったり、あるはずのものがなかったりします。なかなか思うようにいきませんでした。

肥田さん：

　でも、最終的にはCG（コンピューター・グラフィックス）でシミュレーションした通りに概おおむね収おさまりました。このときは、「やった！」と思いましたね。遮しゃへい体設置の仕事は成果がはっきりと目に見えるので、達成感があっていいですね。

違ちがう会社の人が一緒いっしょに働くのでコミュニケーションは何よりも大切

共同企業体ということで、仕事の進め方に違ちがいはありましたか。

肥田さん：

　私たちのような建築業界と東芝さんのようなメーカーでは、工事の日程に対する考え方に違ちがいがあることを知りました。私たちは日程にあまり余裕よゆうをもたせることはないのですが、メーカーさんは想定外の事態が起きる可能性を念頭において、日程を組むのだと知りました。そうした考え方の違ちがいを埋うめるために、コミュニケーションは日々欠かせません。「話をしない時間をつくらない」ということを心がけて、徹底的てっていてきに話し合って仕事を進めてきました。

高橋さん：

　1Fがほかの現場と違ちがうのは、放射線管理区域内ほうしゃせんかんりくいきないにいられるのが10時間以内に定められていることです。でも、初めての現場ですから、大なり小なり思いがけないことが起きます。それを頭に入れておかないと、作業が中途半端ちゅうとはんぱな状態で終わってしまうのです。そうならないため、毎日、計画的に作業の内容と所要時間を見積もって進める必要があります。その見積もり方を身につけるまでに、ずいぶん時間がかかりました。

1Fの現場とほかの現場では仕事に違ちがいはありますか。

肥田さん：

　1Fの仕事は、ほかの仕事にはない気持ちにさせてくれます。一般いっぱんの建設工事では、どうしても利益を考えないわけにはいきません。ところが、1Fではそうしたお金のことよりも、1日も早く燃料を取り出して、地域ちいきや日本のためになりたいという目的意識が強くなるのです。また、同じ建設業者とJVを組んでいますが、ライバルという感覚よりも、同じユニフォームを着た仲間だという意識がすごく強くなるのが不思議ですね。

高橋さん：

　私は普段ふだんは横浜の事務所にいて1Fに定期的に来るのですが、常に緊張感きんちょうかんがある現場だと感じます。同じ作業であっても、日々状況じょうきょうが変わってきます。たとえ自分たちの仕事が変わらなくても、近くで別の工事をしている他社の作業内容が変わると、それに対応する必要が出てくるからです。とはいえ、大変な仕事ですが誰だれかがやらなくてはなりません。それならば、自分たちが少しでも進めていこうという前向きな気持ちになるのが1Fという現場だと思います。