1 FOR ALL JAPAN 廃炉のいま、あした

1Fを守る仲間たち

小野明 内田俊志

2016年7月6日

INTERVIEW 12 安全確保はもちろん、やりがいのある職場づくりにも注力します

小野明小野おの あきらさん
前発電所長
2013年6月から2016年6月まで
内田俊志内田うちだ 俊志しゅんじさん
現発電所長
2016年7月から

 震災しんさいが発生してから5年。その間、3名の方が1Fの所長職をまっとうしてきました。そしてこの7月、1Fの所長が代わります。2013年6月から所長として尽力じんりょくされてきた小野明さんから、内田俊志さんにバトンタッチされます。今回は、そんなお二人に1Fで働く作業員の方々かたがたへの思い、1Fの未来について語り合ってもらいました。

これまでの経歴と1Fに来たときの印象を教えてください。
内田俊志

小野さん:

 わたしは営業などの分野も経験しましたが、長くたずさわったのは原子力分野です。1Fの5・6号機のユニット所長として着任したのが、2011年12月。震災後しんさいごに初めて1Fの状況じょうきょうを見たときは、おどろいてショックを受けました。その1年半後に1Fの所長に就任しゅうにんいたしました。プラントの安定化に取り組みつつ、汚染水処理おせんすいしょりや廃炉に向けた準備なども進めてまいりました。

内田さん:

 わたしは火力発電分野が長いのですが、2006年から2年間、1Fで部長職を務めました。当時、小野さんも同じ1Fの部長でしたので、原子力の経験が少ないわたしは、同じ部長だった小野さんにいろいろなことで助けていただきました。震災しんさい発生時には、千葉の東火力事業所におりました。1Fのことが非常に気がかりでしたが、電源でんげんが不足する中で安定供給きょうきゅうに向けて奔走ほんそうしました。2013年に1Fをおとずれた際、小野さんに会いました。

当時、小野さんは1Fの所長でしたね。

内田さん:

 そうです。小野さんをはじめ1Fの方々かたがたと情報交換こうかんをしました。火力部門の技術者は日ごろから危険物きけんぶつなどをあつかう機会が多いので、そうした現場の仕事を得意としています。そういう所で少しでも力になれないかと、人的な支援しえんなどもしてまいりました。

小野さん:

 1Fの大きな課題である水処理しょりの分野を中心に、火力部門から優秀ゆうしゅうな技術者がきてくれました。ありがたいことですし、非常に助かりました。

住環境じゅうかんきょうの整備に力を入れシャワーや休憩所きゅうけいじょを設置

小野さんの1F勤務きんむは5年近くになります。注力したことなどをお話しください。
小野明

小野さん:

 当然ながら、最も優先ゆうせんすべきは安全確保です。その一方で、汚染水処理おせんすいしょりという課題もありました。具体的な成果としては4号機の燃料をすべて取り出したことや2015年5月にはタンクにたまった汚染水おせんすいの全量処理しょりが完了しました。

 また、作業環境かんきょう改善かいぜんにも注力しました。だれにとっても、衣食住は重要です。そうした基本的な条件が整えば、安全にもつながります。住環境じゅうかんきょうの整備に注力したほか、作業現場でのシャワーの利用開始や大型休憩所きゅうけいじょの設置など、現場の環境改善かんきょうかいぜんに取り組みました。

 2016年3月からは1Fのかなり広いエリアで、全面マスクの着用なしに仕事ができるようになりました。装備そうびの軽減は、作業負荷の低減につながっていると思います。

5年前と比べると、1Fの雰囲気は相当変わりましたね。

小野さん:

 プラント全体が落ち着いてきたことで、作業員の方々かたがたの表情も明るくなったと感じています。例えば、挨拶あいさつです。すれちがったときなどに、挨拶あいさつをしない人はまずいないのではないでしょうか。現場の環境かんきょうを少しずつではありますが、改善かいぜんしてきました。また、タンクの汚染水処理おせんすいしょりの完了など、自分たちがたずさわった仕事が目に見える形になってきた背景はいけいもあって、徐々じょじょ雰囲気ふんいきもよくなってきたように思います。

廃炉に向けてハードとソフト面の基盤きばん整備が必要

廃炉に向けた作業は長期にわたりますが、現状はどの程度まで進んでいますか。

小野さん:

 現在の大きなテーマは汚染水おせんすいへの対応と廃炉の2つです。汚染水おせんすいについては問題も残っていますが、かなり前進しました。廃炉に向けた作業についても、ある程度先の見通しができるようになったと思います。ただ、デブリについては分からない部分も多いので、調査などの準備を進めておく必要があります。廃炉は数十年続く事業。この長期プロジェクトを支えるしっかりした基盤きばんを、いまのうちにつくっておく必要があります。

基盤きばんというと、どのようなものですか。

小野さん:

 例えば、事故後に取り付けたケーブルなど、仮設に近い設備がかなりあります。必要なものについては、これを本設化すべきでしょう。また、ハードだけでなく、業務の進め方、物事の決め方などソフトの面でも基盤きばんを整えていく必要があります。

内田さん:

 今後、いろいろむずかしい課題に直面することがあるでしょう。自分のこれまでの経験を生かすとともに、所員や協力企業きぎょう方々かたがたなど1Fで働くみなさんの話を聞きながら、課題を乗りえていきたい。そして、安全な環境かんきょうづくりはもちろんですが、やりがいのある職場づくりにも注力したいと考えています。ここには、様々さまざまなチャレンジがあります。チャレンジの結果、新しいものを生み出せる可能性も大きい。例えば、1Fで生れた技術が、将来しょうらい役立つかもしれません。

最後に、現場を支えるみなさんへのメッセージをお願いします。
小野明 内田俊志
両所長の作業員へのメッセージ
  • 小野

    作業員の方々かたがたと家族のみなさんに、改めて感謝の気持ちを伝えたい

  • 内田

    ここまでたどり着いたのは、作業員一人ひとりの努力の結果です

小野さん:

 事故後5年以上が経過し、ここまで1Fは安定化しました。作業員の方々かたがた頑張がんばりによるものだと思いますし、所長としてただただ感謝しています。同時に、その仕事を支えているご家族のみなさんに対しても、改めて感謝の気持ちをお伝えしたいですね。

内田さん:

 たった5年間で、ここまでたどり着くことができたことにおどろかされます。1Fで働く一人ひとりの大変な努力の結果であり、本当に頭が下がる思いです。1Fでは約7000人が働いています。1Fで働く全てのみなさんが一体となることが大事。全員で協力しながら課題を克服こくふくし、前進しましょう。

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