田部井さん：

　震災直後に、生まれ育った故郷ふるさとの福島県が大変な状況じょうきょうになっていることを知り、私わたしに何ができるかを真剣しんけんに考えました。いても立ってもいられない――。そんな気持ちに突つき動かされ、山の仲間とともに寝袋ねぶくろや毛布、手袋てぶくろなど登山の道具を集めて避難所ひなんじょに届とどけました。その時、避難所ひなんじょでは「一日何もすることがなく、すごくつらい」という話を聞き、少しでも気晴らしになればと思い、私わたしの登山経験を生かしてハイキングを企画きかくしました。

　それが震災3カ月後の6月のことです。会津若松あいづわかまつの芦ノ牧温泉あしのまきおんせんに避難ひなんしていた福島県楢葉町ふくしまけんならはまちの5人を誘さそって、裏磐梯うらばんだいの五色沼ごしきぬまに行きました。最初のうちは会話も弾はずまず沈しずんだ空気だったのですが、五色沼ごしきぬまに着いたとたん「すごくきれい」「磐梯山ばんだいさんは裏うらから見ると形が違ちがうね」など目のあたりにする風景に大喜び。「ああ、自然の中にお連れしてよかったな」と思いました。

　この活動は広がりを見せ、被災地の復興を支援しえんする「東北応援とうほくおうえんプロジェクト」の一環いっかんとして今も継続けいぞくしています。避難場所ひなんばしょはさまざまなので、今回は大熊町おおくままちのみなさん、次回は富岡町とみおかまちのみなさんといった具合に町ごとに毎月ハイキングを企画きかくし、すでに58回を迎むかえました。

　また、被災ひさいした東北の高校生たちを富士登山に招待する「被災ひさいした東北の高校生を日本一の富士山へ」という活動も毎年行っています。日本一の富士山に登ることで、前に進む「勇気」と「元気」を持ってもらいたいという願いを込めた活動です。

　また、実際に福島を訪おとずれ、現地に泊とまり観光し、おいしいものをたくさん食べてお土産もたくさん買って帰る。こういう活動も立派りっぱな復興支援ふっこうしえんの1つです。多くの人に東北の良さ､福島の素晴らしさをこれからも伝えていきたいと思います。